俺とプリプリ

93年春…上の兄が大学進学のために上京。
中三になった俺は兄の部屋を自分のものとして占有できる事になった。
そしてその部屋には兄が置いていったたくさんの漫画とCD…


当時の俺の趣味はゲームか漫画。芸能関連には一切興味が無かった。
小学校の頃はそれでも友達同士の会話で困る事は無かったが
中学校にもなるとTVの話題も増え、ゲームを卒業する人もちらほらと。
芸能話についていけない俺は完全な芸能コンプレックスだった。
そんな俺にとってこのCD群はコンプレックス解消にもって来いの一品。
中一の時に友達と初めてカラオケに行って何も歌わずに帰ってくるという
暗い過去もありましたが、そんな過去とも決別できる!




てなわけでいろいろCDを聞く。
そして手にした1枚のCD。
黄金色に輝くそれは、そう、
『世界でいちばん熱い夏』(平成レコーディングバージョン)

はっきりいってしびれました。
めちゃくちゃ爽やかでメロディアス。
シャングリラやジュヴナイルといった単語も
意味不明だがゲーマーの俺には格好良く聞こえ、
また曲全体のキラキラ感を増していた。
それまで
ゲームミュージック最高!歌詞のある音楽なんて糞」
と思っていた俺の価値観をぶち壊す位のパワーを持っていた。

歌ってるアーティストは『プリンセス・プリンセス』。
名前はどこかで聞いた事あったかもしれませんが、
それが何なのか、バンドなのか、何人組なのか、そんな基本的情報も
何一つ知りません。
ただ、この『「プリンセス・プリンセス」って人の曲もっと聞きたい!」
と思ってCD棚を漁ります。


そして手にした1枚のCD『DIAMONDS』。
このCDを手にした時、不思議な感覚に陥る。


「あれ、この曲、もしかして聞いた事あるんじゃあ…しかも俺が長い間探してたような…」
これから初めて聞こうというCDに対して何故そう思ったのかわからない。
でも何かしらの電波というか予感というか期待というかなんなのか、
デジャヴともまた違う妙な感じ…


そして再生した瞬間、その感覚は、間違いじゃなかったと解る。
間違いなく聞き覚えのあるメロディ…
目の前に広がる小学校の想い出の数々…



部活に馴染めず登校拒否したこと…サボってゲーセンに行ってたこと………

もっと嫌になって家出したこと…その日のうちに警察に捕まったこと…迎えにくる親を待ちながら警察のTVで見たドラゴンボール…翌朝の食卓の気まずい風景………

それでも更正せず親父にぶっ飛ばされ顔面血まみれになったこと………

好きな先輩がいたこと…好きな後輩がいたこと………

初めてもらったバレンタインのチョコレート………

優しい先輩方…可愛い後輩達…部長になって頑張ったこと………

オナニーも知らない、セックスも知らない、まっさらだったあの頃………



そう…その想い出の全てが、ダイアモンド………




俺は小学校ではマーチングバンド部に所属していたが、
コンクールの時の移動のバスで良くかかっていた曲、
それがこの『DIAMONDS』とカップリングの『M』だった。

前述の通り俺は歌詞のある歌が嫌いだったのだが、
この2曲はその美しいメロディから良く覚えていたんですよ。
あと歌中にでてくる「KISS」って単語に恥ずかしさを覚え
顔をしかめていた事も。

このCDを聞いた瞬間、その部活時代の様々な想いが脳内を
駆けめぐります。
もともと俺、中学校時代があんまり好きじゃなかったんですよ。
思春期になって女の子と全然しゃべれなくなるし、
オナニーばっかするようになるし、部活は科学部。
どう考えても青春とは縁遠い部活です。

それに比べて小学校のマーチングバンド部は、
周り女の子ばっかりだったし、恋してたし、家出しちゃうくらい
あれこれ悩んで苦労したけど、結局そういった苦労が充実につながったり
したわけだし、どれもこれも輝かしい想い出ばかりなんですよ。

この『DIAMONDS』と『M』は、そんなパッとしない俺を
一気に小学校時代へと連れ戻してくれるタイムマシーンのようなCDだったわけです。



この一件ですっかりプリプリのファンになった俺は中古屋でCDを
買い集めます。
そしてPAMELAHに激ハマリするまで
久宝留理子と並んで俺の中のS級アーティストとして
燦然と輝き続けるのでした。